テレビを見ながらお喋りが止まらないASDの父:50回目の同じ話

テレビを見ながらお喋りが止まらないASDの父:50回目の同じ話 尊大型アスペルガー

ASDの家族の日常:同じ話を繰り返す父とどう付き合うか悩むあなたへ

Q.尊大型ASDの父はとてもお喋りで、
家族でテレビを見ている時には常に話しています。
例えば、曳舟駅が映れば必ず石井君の話、
海が映れば昔おぼれた話…と言ったように、
目に映る物から脳内連想して
同じ話”を脳の引き出しから引っ張り出して口に出します。
これらの話は既に50回以上聞いているので
「それ聞いたよ」と言うとムッとして不機嫌になります。
プライドが高いのでいつも上から目線で話を聞くのが辛いです。
なぜ黙っていられないのでしょうか?
脳が普通の人間とは違うのでしょうか?
同じ人間とは思えません。

A.ご質問ありがとうございます。
お父様の行動について、具体的で詳細な描写をありがとうございます。

お父様の行動は、ASD(自閉スペクトラム症)
の特性と関連している可能性がありますが、

以下でその背景を丁寧に解説し、
なぜそのような行動が見られるのか、
どのように対応できるかについてお答えします。

1. なぜ黙っていられないのか?

ASDの特性を持つ人の中には、
特定の行動パターンや思考の傾向が見られることがあります。

お父様がテレビを見ながら連想に基づいて同じ話を繰り返すのは、
以下のようなASDの特性に関連している可能性があります。

連想思考と反復行動

ASDの方は、特定の刺激
(例:テレビに映る曳舟駅や海)から
強い連想を引き起こし、それを口に出すことで自己表現する傾向があります。

これは、脳が特定の情報を強く結びつけて記憶しており、
似た状況で自動的にその記憶が引き出されるためです。
この「繰り返し」は、ASDの方にとって
安心感や予測可能性を提供する手段である場合があります。

社会的コミュニケーションの違い

ASDの方は、他者との会話の流れや
相手の反応を読み取るのが難しい場合があります。

お父様が「同じ話」を繰り返す際、
家族がすでに聞いた話だと認識していない
またはその話をすることで家族とのつながりを感じている可能性があります。

興味の集中

ASDの方は特定の話題やエピソードに強い興味を持ち、
それを共有することで満足感を得ることがあります。

お父様にとって、過去のエピソード
(石井君や溺れた話など)は重要な記憶であり、
それを話すことで自己を表現しているのかもしれません。

2. 「それ聞いたよ」と言われると不機嫌になる理由

お父様が「それ聞いたよ」と言われるとムッとするのは、
以下のような心理や特性が関係している可能性があります。

プライドと自己認識

ASDの方は、自分の話や経験に強い愛着を持つことがあります。
話が否定されたり遮られたりすると、
それが自己否定のように感じられる場合があります。

特にプライドが高い場合、
「自分の話を聞いてもらえない」ことが自尊心を傷つける可能性があります。

変化への抵抗

ASDの方は、ルーティンや繰り返し行動に安心感を覚えることが多く、
話す内容やタイミングが変わることに対してストレスを感じることがあります。

「それ聞いたよ」という反応は、
お父様のルーティンを中断する形になり、
不快感を引き起こす可能性があります。

3. 脳が「普通の人間」とは違うのか?

「同じ人間とは思えない」という気持ちは、
家族として接する中で強いフラストレーション
を感じているからこその表現だと思います。

ASDは神経発達の多様性の一形態であり、
脳の情報処理の仕方に特徴があります。
以下はそのポイントです。

脳の配線(神経発達の違い)

ASDの方の脳は、情報処理や社会的相互作用
の方法が定型発達(neurotypical)の人と異なる場合があります。

例えば、感覚処理が過敏だったり、
特定の記憶連想が強く引き出されたりすることが研究で示されています。
これが「同じ話を繰り返す」行動や、特定の刺激に強く反応する理由の一因です。

共感や視点の違い

ASDの方は他者の視点
(「この話は家族が何度も聞いている」という認識)
を理解するのが難しい場合があります。

これは「心の理論(Theory of Mind)」
という認知機能の違いに関連しています。
お父様が家族の反応を気にせず話すのは、
悪意や無関心ではなく、単にその視点が持ちにくいためかもしれません。

同じ人間として

ASDは人間の多様な特性の一部であり、
お父様も同じ人間として感情やニーズを持っています。
ただし、コミュニケーションや行動のスタイルが異なるため、
家族として接する際に「違い」を強く感じることがあります。

4. どう対応すればいいか?

お父様の行動が家族にとって負担になっているのは理解できます。
以下に、状況を少しでも和らげるための具体的な提案をします。

共感的なアプローチ

お父様の話を完全に遮るのではなく、
話を認めた上で会話を進める方法を試してみてください。

例えば、「ああ、曳舟駅の話だね!
石井君の話、懐かしいね。それで、最近の曳舟駅ってどう思う?と、
話を肯定しつつ新しい話題に導くアプローチです。

これにより、お父様のプライドを傷つけず、
繰り返しを減らす可能性があります。

環境の工夫

テレビを見ている時に話が始まるのがストレスであれば、
特定の番組(お父様が連想を強く引き起こすもの)を避けたり、
家族で静かに見たい番組の時間を決めて
「この時間は静かに見よう」と提案するのも一案です。

ASDの方は明確なルールや予測可能性を
好む傾向があるため、事前に合意を作るのが有効です。

感情の共有

お父様に直接「同じ話が何度も続くと少し疲れてしまう」と正直に、
かつ優しく伝えるのも一つの方法です。

ただし、ASDの方は批判に敏感な場合があるので、
「私もお父さんの話は大好きだけど、新しい話も聞いてみたい!」
とポジティブな言い回しを心がけると良いでしょう。

5. 家族としての気持ちを大切に

お父様の行動にイライラしたり、
「同じ人間とは思えない」と感じるのは、
毎日の積み重ねの中で自然な感情です。

あなたがそのように感じるのは、
お父様との関係を大切に思っているからこそでもあります。
以下は、家族としてのストレスを軽減するためのヒントです。

自分の感情を認める

イライラや疲れを感じるのは自然なことです。
自分を責めず、感情を吐き出せる場所
(友人や専門家との会話)を持つことが大切です。

小さな楽しみを作る

お父様との時間以外で、
家族やあなた自身がリラックスできる時間や
趣味を持つことで、ストレスを軽減できます。

ASDについて学ぶ

ASDの特性を理解することで、
お父様の行動が「意図的でない」ことや、
脳の仕組みによるものだと受け入れやすくなるかもしれません。
日本語で書かれたASDに関する本(例:『自閉スペクトラム症のすべてがわかる本』)や、
オンラインのリソース(日本自閉症協会など)を参考にするのもおすすめです。

6. 最後に

お父様の行動は、ASDの特性による
脳の情報処理の違いが大きく影響している可能性があります。

それが「黙っていられない」理由や、
繰り返し話す理由の一因です。
ただし、お父様も家族とのつながりを求めている可能性があり、
その表現方法が家族にとって負担になっている状況です。

少しずつコミュニケーションの工夫や環境調整を試みながら、
家族全員がストレスを減らせる方法を見つけることが大切です。

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